素材を活かしたハンドメイド品

私たちが手にとって使いことができるアイテムの数々には、必ず「素材」があります。それらはそのアイテムを構成する物理的な要素です。

近代化、工業化が進んで一般化した素材のひとつに「プラスチック」などの樹脂があります。それらは整形が容易で、さまざまなデザインをいとも簡単に再現することができるものです。ただ手触りとしては均一で、手に取ると明らかに「プラスチックだ」とわかるものほとんどです。私たちはあまりそのようなモノに対して「高級感」のようなものを感じることがありません。そこにあるのは効率化された大量生産の気配と、化学物質の無機質な感覚です。私たちはそれらに馴れてしまったものの、そこに「人の温かさ」のようなものを感じることは少ないでしょう。

私たちがその「モノ」の温かさを感じられるような場合は、それは天然の素材でできていたり、明らかに人の手で加工されたとわかる場合だったりするのみです。工場で大量に作られたものは、そのような「作った人が使う人に向けて込めた温かい想い」のようなものが込められづらいのです。私たちは無意識のうちに手にしたアイテムが持つ「体温」を感じ取るようです。その原点は「学校で使うための道具を母が作ってくれた記憶」に遡ることができるかもしれません。私たちの心のどこかにそのような記憶が残っていて、私たちに語りかけるのでしょう。「暖かい道具というものはなんであるか」ということを、です。

「素材を活かす」ということはその道具にとって幸せであることが多いでしょう。その道具を構成する要素としての「素材」は、後から変えることができないものです。それがそのアイテムを外から覆っているのであれ、内側も全て同じ素材でできているものであれ、道具の性質を決定づけてしまう重要な要素であることには変わりがないのです。それらの要素がそのアイテムの用途にあったものである場合、それはそのアイテムにとってとても幸せなことです。素材の持つ風合いというものはどうしもあります。その道具の作り手が、その道具の有り様とその素材の特性を理解しているかどうかで、その道具の運命が定まります。

「素材を活かす」ということはそういうことで、その道具がその機能を全うするために、機能的にその素材を活かすということや、手にしたときの感覚をより人にやさしくするためにその素材を選ぶであるとか、理由がそこに込められているのです。全てのアイテムは何かの「素材」でできています。その素材にはさまざまなものがあります。木であるとか、布であるとか、金属であるとか、そのような大分類から、木の中でもどのような種類なのか、金属でもどのような種類なのか、という具合です。

それらの素材の特性を理解しながらそのアイテムを作ることで、その道具の魅力や機能性は一段と増すことになります。素材を活かしたハンドメイド品は、ひとつひとつ丁寧にその材料を加工して出来上がったものなのです。そこにはそれを作った人の想いが込められています。私たちはその道具を使ったり、手にしたりすることでその「作り手の意志」を感じ取ることができるのです。

作り手の意志を体現するための重要な要素が「素材」なのです。